はじめに|「滑ってヒヤッとしたこと」ありませんか?
「お風呂場で足を取られた」
「トイレから立ち上がったときによろけた」
そんな“ヒヤッとした体験”はありませんか?
高齢になると、こうした何気ない動作の中に思わぬ転倒リスクが潜んでいます。
特に、水回りは家の中でも滑りやすく、危険が集中する場所。
今回は、私自身が病院で多く見てきたケースをもとに、
「滑りやすい場所で転ばないための具体的な工夫」をお伝えします。
1|浴室:濡れたタイルと深い浴槽は、油断禁物
昔ながらの家屋では、浴室の床がタイル貼りになっていることがよくあります。
このタイル、石けんやシャンプーがつくととても滑りやすくなります。
さらに、深めの浴槽があると…
- 脱衣所からまたぐ時に体がグラつく
- 濡れた足で段差を越えようとして滑る
- 湯気で床が見えづらくなり、距離感を間違える
といった危険が多くなります。
実際に、**「浴槽から出ようとしたときに滑って背中を打った」**という相談はよくあります。
とくに高齢の方にとっては、一瞬のズレが大きな事故に繋がるのです。
💡 タイル床には「滑り止めマット」を敷くだけで、足元の不安がグッと軽減します。
対策の工夫(浴室)
✅ 滑り止めマットを敷く(タイル床は特に)
✅ シャワーチェアで座ったまま洗えるようにする
✅ 浴槽の縁にまたがず、浴槽内にステップを入れて出入りを軽くする
✅ 出入り口に段差ステップや手すりを設置して、体を支えられるようにする
2|脱衣所・洗面所:濡れた足×冷たい床に注意
「裸足で冷たい床を歩いてヒヤッとした」
「マットの端がめくれてつまずいた」
そんな経験がある方も多いのではないでしょうか。
脱衣所や洗面所は、
✅ 足元が濡れやすい
✅ マットがずれやすい
✅ 靴下や裸足で滑りやすい
という**“滑る条件が揃ってしまう場所”**です。
また、かがんで下着を履く・タオルを取るといった動作も重なることで、
一瞬のバランスの崩れが転倒に直結することがあります。
対策の工夫(脱衣所・洗面所)
✅ 吸水性・滑り止め付きのマットを使用
✅ マットの裏がゴム製か確認(毛足が長すぎるものはNG)
✅ 壁際に手を添えられる場所をつくる or 椅子を置く
✅ 床材が滑るなら貼るタイプのマットに張り替えも検討
3|トイレ:狭いのに動きが多い“盲点”
「便座から立ち上がろうとしてよろけた」
「ズボンを上げようとしたら後ろに倒れそうになった」
こうしたトラブルの多くが、**トイレという“狭くて支えにくい場所”**で起きています。
- 小さな空間の中で立つ・座る・回る動作を繰り返す
- 足元にマットやスリッパがあるとバランスが崩れる
- 夜間のトイレでは視界が暗く、距離感もズレる
「トイレだから大丈夫」と思わずに、転倒リスクを見直すことが大切です。
対策の工夫(トイレ)
✅ 壁や便器横にL字型や縦型の手すりを設置
✅ スリッパは滑りにくい素材 or 廃止も検討
✅ 便座の高さが合っていない場合はクッションや補高便座を活用
✅ 夜間照明やセンサーライトで視界を確保
💡 立ち上がりやすくなる「トイレ用手すり」があると安心感が違います。
まとめ|「滑る場所」は身近な生活の中にある
転倒は、大げさな場面ではなく、「毎日繰り返している当たり前の動作」の中で起きるものです。
✅ タイルのお風呂
✅ 濡れた床
✅ 立ち上がり動作
✅ ずれたマット
こうした“小さな危険”を減らすことで、日々の安心感と生活の自由度がぐっと高まります。
「最近ヒヤッとしたことがある」という方は、
ぜひ今日からできる対策から始めてみてください。
次回予告|“わずかな段差”につまずく理由と見直しポイント
次回は、「敷居」「マットの端」「部屋の切り替え」など、わずかな段差での転倒リスクに注目してお届けします。
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