はじめに|「足腰は元気なのに転んでしまう」理由
体力もある、よく歩いている…なのに転倒してしまう。
そんなときに見逃されがちなのが「認知機能の変化」です。
私は病院勤務時代に、“判断が遅れた” “気づけなかった” ことが原因で転んだ方を何人も見てきました。
今回は、認知面の変化がどのように転倒に影響するのか、チェックすべきポイントとあわせて解説します。
1|注意力の低下で「足元に気づかない」
- 段差やマットに気づかずにつまずく
- 会話や音に気を取られて足元を見ていない
- 目の前の障害物をよけ損ねる
これは注意のコントロールが弱くなっている状態です。
高齢になると、「2つのことを同時に意識する」ことが難しくなり、転びやすくなります。
2|判断力の低下で「危険を避けられない」
- 足元が滑りそうでも、そのまま進んでしまう
- 暗い廊下でも電気をつけずに歩き出す
- 手すりや支えがあっても使わない
これらは、状況を“危険”と判断する力の低下によって起こります。
転びそうな場面でも「なんとかなる」と判断してしまい、大きなケガにつながることも。
3|記憶の混乱で「安全策を忘れてしまう」
- 昨日教わった注意点を忘れてしまう
- いつもは手すりを使うのに、今日は使わない
- 「段差がある」と言われてもすぐに忘れてしまう
こうした記憶の混乱があると、安全に行動するための“習慣”が安定しません。
「昨日はできたのに、今日は転んだ」というケースは、記憶の変化が関わっていることもあります。
4|こんな様子があれば注意
以下のような変化があれば、認知機能の低下による転倒リスクが高まっている可能性があります:
- ぼーっとして動き出すことが増えた
- 転倒理由を本人が「よく覚えていない」
- 家族の声かけに対する反応が鈍い
- 安全な動作を本人が「面倒くさい」と避ける
これらは、“注意・判断・記憶”のうちどこかに変化が出ているサインかもしれません。

まとめ|転倒は“気づけない”ことから始まる
転倒は、身体だけの問題ではありません。
✅ 注意がそれた
✅ 危険だと思わなかった
✅ 気づいた時には遅かった
こうした“認知的なズレ”が、転倒の引き金になることがあるのです。
「体は元気だけど、最近ちょっと様子が違う」
そんなときこそ、認知機能の変化にも目を向けてみてください。
次回予告|転倒が生活に与える“見えない影響”とは?
次回は、転倒したあとの生活や体の変化、気持ちの落ち込みなど、**転倒後に起こりうる「見えにくい影響」**について解説していきます。
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