はじめに|「転倒」は高齢者にとって大きなリスクです
高齢者の転倒は、「骨折」や「寝たきり」のきっかけになるだけでなく、その後の生活を大きく変えてしまう可能性があります。
実際、厚生労働省の調査によると、65歳以上の高齢者の約10%が1年間に1回以上転倒を経験しているという報告もあります(※出典:厚生労働省「令和元年 国民生活基礎調査」など)。
転倒を防ぐためには、「なぜ転倒が起きるのか?」という本質を理解しておくことがとても大切です。
1|身体的な変化がもたらす影響
高齢になると、以下のような身体機能の変化が起こりやすくなります:
- 筋力の低下(特に太もも・体幹)
- バランス機能の低下(ふらつきやすくなる)
- 関節の柔軟性の低下(つまずきやすくなる)
- 反射的な動作の遅れ(とっさに手を出せない)
これらが複合的に重なり、日常生活の中での「ちょっとした動作」が転倒につながってしまうことがあります。
2|住環境が転倒を引き起こす
転倒の多くは、自宅内で起こっています。特に以下のような場所や動作には注意が必要です:
- 玄関の段差や靴の脱ぎ履き動作
- トイレや浴室などの濡れた床
- 部屋と廊下の敷居の段差
- 滑りやすいフローリングや、めくれたカーペット
こうした環境要因に気づかず過ごしていると、転倒リスクが高まりやすくなります。
3|認知機能の変化も見逃せない
高齢になると、認知面での変化も転倒に影響を与えることがあります。
- 注意力の低下(足元への意識が薄れる)
- 空間認識の低下(段差の見え方や距離感のズレ)
- 記憶や判断力の低下(手すりの存在を忘れるなど)
身体機能だけでなく、「考える力」や「気づく力」の変化も、転倒の引き金になり得るのです。
4|転倒は“きっかけ”であり、“転機”になる
転倒はその場限りの事故ではありません。次のような連鎖が起こることも少なくありません:
- 骨折による長期入院
- 外出や活動機会の減少
- 筋力や体力のさらなる低下
- 自信喪失やうつ傾向
つまり、一度の転倒が「動けない」「外に出ない」生活へと変わる転機になってしまうこともあるのです。
今後のシリーズについて|転倒リスクの深掘りへ
本記事では、高齢者の転倒リスクを「身体機能」「住環境」「認知機能」の3つの視点で整理しました。
次回からはそれぞれのテーマをより詳しく解説する記事を順に公開していきます。
✅ 身体的な変化によるリスクとは?
✅ 転倒を招く住環境の特徴とは?
✅ 認知機能の低下が転倒に与える影響とは?
✅ 転倒が生活に与える“見えづらい影響”とは?
まずは【身体的な変化】から取り上げていきます。
ぜひ今後のシリーズもご覧いただき、「転ばない暮らし」を一緒に考えていきましょう。
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