はじめに|「体は元気」でも油断できない理由
筋力や関節の問題がない方でも、なぜか転倒が増える。
そんな場合に見落とされやすいのが、認知機能の変化です。
高齢者の転倒は、身体的な衰えだけでなく「気づく力・判断する力の低下」によっても引き起こされることがあります。
1|注意力の低下:足元への意識が薄れる
- 「段差に気づかなかった」
- 「カーペットの端に引っかかったのに、反応できなかった」
- 「声をかけられた瞬間にふらついた」
これらは、注意が分散してしまい、足元に集中できていない状態でよく起こります。
高齢になると、注意を一度に複数の対象に向けることが難しくなるため、歩行中の注意力低下が転倒の引き金になります。
2|空間認知の低下:距離感や段差の把握ミス
空間認知力とは、「物の位置や距離を正確に把握する能力」です。
これが低下すると、
- 段差の高さを見誤る
- 手すりや家具までの距離を正しくつかめない
- 曲がり角で壁にぶつかる
といったトラブルが起きやすくなります。
見えていても、実際の距離や大きさを正確に判断できていないことが、転倒につながっている場合もあるのです。
3|判断力の低下:安全な動作ができなくなる
認知機能の変化によって、「どう動けば安全か」の判断が鈍くなることがあります。
- 立ち上がるときに手すりを使わずによろける
- 足元が滑りやすいのに、そのまま歩き出す
- 暗がりでも電気をつけずに移動しようとする
このように、状況を理解し、安全な選択をする力が弱まることで転倒リスクが上がるのです。
4|「転倒してから変化に気づく」ケースも多い
ご家族やご本人が、これらの変化に気づくのは、転倒した“あと”になってしまうことがほとんどです。
- 「なんで転んだのかわからない」
- 「ふと立ち上がったら倒れていた」
- 「少し前からぼーっとすることが増えていた」
このようなエピソードは、認知機能のサインであることも少なくありません。
まとめ|“気づけないこと”がリスクになる
認知機能の変化は、本人も気づきにくく、周囲も見逃しがちです。
しかし、「段差に気づけない」「判断が遅れる」といった小さな変化が転倒に直結することを、知っておくことが重要です。
次回予告|転倒が生活に与える“見えにくい影響”とは?
次回は、一度の転倒がその後の生活や身体、気持ちにどんな影響を与えるかをテーマにお届けします。
- 活動量が減る
- 自信をなくす
- さらに筋力が落ちる…
そんな「転倒の負の連鎖」を防ぐために、できることを一緒に考えていきましょう。
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