「取り上げる」以外の方法を考えたい
火の消し忘れの相談は、現場でも一番悩ましいものでした。リスクが高いので、コンロを撤去してしまうご家庭も実際に見ています。ただ、料理という役割を一気に取り上げると、本人の尊厳と生活の張りが同時に失われます。私がよくお話ししていたのは「家族が一緒にいられる時間だけ料理をする」という折衷案でした。全部か禁止かの二択にしない工夫が、認知機能が下がってきた方との暮らしでは大切です。
もう1つ、現場で印象的だったのは「環境を変えなかったからうまくいっていた」ケースです。長年の住まいをそのままにしていたことで、体が覚えたルーティンで生活が回っていた方がいました。認知機能が下がってきたとき、環境の大改造はかえって混乱を招くことがあります。変えるのは危険な箇所だけ。それ以外は「いつも通り」を守るのも、立派な対策です。
「そろそろ見守りが必要かも」の目安
作業療法士として、ご家族から「いつから見守りサービスを考えるべきですか」とよく聞かれました。私がお伝えしている目安は3つです。
- 同じことを聞き返す回数が増え、火の消し忘れが心配になったとき
- 夜間にトイレ以外で起きて動いている様子があるとき
- 転んだことを本人が覚えていない、または隠すようになったとき
この段階になると、家族の声かけだけでカバーするのは難しくなります。警備会社の高齢者見守りサービスは、駆けつけまで頼める点が家電型の見守りとの違いです。資料請求は無料なので、比較材料として手元に置いておくと、いざというとき慌てずにすみます。
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「そもそも認知症が始まっているのでは」と感じている方は、親の認知症、最初に気づくのはどんな変化?もあわせてどうぞ。家族が最初に気づくサインと、気づいたあとにやってはいけない対応をまとめています。
はじめに|「体は元気」でも油断できない理由
筋力や関節の問題がない方でも、なぜか転倒が増える。
そんな場合に見落とされやすいのが、認知機能の変化です。
高齢者の転倒は、身体的な衰えだけでなく「気づく力・判断する力の低下」によっても引き起こされることがあります。
1|注意力の低下:足元への意識が薄れる
- 「段差に気づかなかった」
- 「カーペットの端に引っかかったのに、反応できなかった」
- 「声をかけられた瞬間にふらついた」
これらは、注意が分散してしまい、足元に集中できていない状態でよく起こります。
高齢になると、注意を一度に複数の対象に向けることが難しくなるため、歩行中の注意力低下が転倒の引き金になります。
2|空間認知の低下:距離感や段差の把握ミス
空間認知力とは、「物の位置や距離を正確に把握する能力」です。
これが低下すると、
- 段差の高さを見誤る
- 手すりや家具までの距離を正しくつかめない
- 曲がり角で壁にぶつかる
といったトラブルが起きやすくなります。
見えていても、実際の距離や大きさを正確に判断できていないことが、転倒につながっている場合もあるのです。
3|判断力の低下:安全な動作ができなくなる
認知機能の変化によって、「どう動けば安全か」の判断が鈍くなることがあります。
- 立ち上がるときに手すりを使わずによろける
- 足元が滑りやすいのに、そのまま歩き出す
- 暗がりでも電気をつけずに移動しようとする
このように、状況を理解し、安全な選択をする力が弱まることで転倒リスクが上がるのです。
4|「転倒してから変化に気づく」ケースも多い
ご家族やご本人が、これらの変化に気づくのは、転倒した“あと”になってしまうことがほとんどです。
- 「なんで転んだのかわからない」
- 「ふと立ち上がったら倒れていた」
- 「少し前からぼーっとすることが増えていた」
このようなエピソードは、認知機能のサインであることも少なくありません。
まとめ|“気づけないこと”がリスクになる
認知機能の変化は、本人も気づきにくく、周囲も見逃しがちです。
しかし、「段差に気づけない」「判断が遅れる」といった小さな変化が転倒に直結することを、知っておくことが重要です。
次回予告|転倒が生活に与える“見えにくい影響”とは?
次回は、一度の転倒がその後の生活や身体、気持ちにどんな影響を与えるかをテーマにお届けします。
- 活動量が減る
- 自信をなくす
- さらに筋力が落ちる…
そんな「転倒の負の連鎖」を防ぐために、できることを一緒に考えていきましょう。
📖 参考書籍のご紹介
認知機能と転倒の関係について、より専門的に学べる書籍として、以下の本が気になっています。
『認知症者の転倒予防とリスクマネジメント 第3版』
(日本転倒予防学会 編)
病院・施設・在宅など、さまざまな現場での支援に活かせる内容が詰まっている一冊です。
認知症ケアに関わる方はもちろん、リスク管理の視点を学びたい方にも役立つ情報がまとめられているようです。
この記事は「高齢者の店頭予防ガイド」の一部としてご紹介しています。転倒予防/住まい全体/足元全体の見直し方を知りたい方は、柱記事もあわせてご覧ください


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