はじめに|転倒は「その時だけの問題」ではない
はじめに|転倒は「その時だけの問題」ではない
私はこれまで病院で多くの高齢者のリハビリに関わってきましたが、
転倒をきっかけに生活が一変してしまう方を何人も見てきました。
骨折などのケガだけでなく、「活動量が減ること」がその後の体と心に与える影響は想像以上です。
一度転ぶと、外出が減り、筋力が落ち、自信を失ってしまう。
そういった“負の連鎖”に入ってしまうケースをたくさん見てきました。
今回は、転倒がもたらす「見えにくい影響」や「生活全体への影響」をわかりやすく整理していきます。
1|転倒によって外出や活動量が減る
転倒後によく見られるのが「出歩くことが怖くなる」こと。
外出が減ると、次のような影響が出やすくなります:
- 筋力や持久力の低下
- 人と会う機会が減り、気持ちが沈む
- 家の中でも動かなくなる
**転倒→活動量減少→さらに筋力低下…**という悪循環に入ってしまうことがよくあります。
2|「また転ぶかも…」という不安が心をしめつける
転倒経験は、身体だけでなく心理面にも強く影響します。
- 立ち上がる時にいつも不安を感じる
- 「もう外には出たくない」と感じる
- 一人の時間が怖くなる
このような不安は、行動の制限や引きこもりを助長し、心の健康にも悪影響を与えます。
3|「寝たきり」につながる可能性も
骨折などで入院や安静が続くと、身体機能は一気に衰えてしまいます。
- トイレに行くのも介助が必要になる
- 座っているだけで疲れるようになる
- 再び歩くことへの自信を失う
特に大腿骨骨折は寝たきりの原因の上位に挙げられており、「たった一度の転倒」がきっかけで生活が一変するケースもあります。
4|家族や介護者への負担も増える
本人だけでなく、家族や周囲のサポート側にも影響は広がります。
- 転倒をきっかけに介護が必要になる
- 常に見守りが必要になり、家族の生活も制限される
- 精神的・時間的な負担が大きくなる
転倒を防ぐことは、家族全体の暮らしを守ることにもつながります。
まとめ|“転倒しない”ことが最大の予防になる
転倒は、「骨折しなければ大丈夫」ではありません。
そこから始まる生活の変化・心理的影響・介護負担など、見えない影響がとても大きいのです。
だからこそ、日頃から「転ばない体と環境づくり」が大切です。
次回予告|次はいよいよ具体的な対策編へ!
ここまでの5回では、転倒の背景やリスク要因を丁寧に解説してきました。
次回以降は、いよいよ実践的な転倒予防策に入っていきます!
- 玄関でのつまずきを防ぐ工夫
- トイレや浴室での安全対策
- 身体機能を整えるセルフケアの提案
まずは【玄関の段差対策編】からお届けします。
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