はじめに|「転倒=外出時」とは限りません
高齢者の転倒は、「骨折」や「寝たきり」のきっかけになるだけでなく、その後の生活を大きく変えてしまう可能性があります。
実際、65歳以上の高齢者のうち約10%(10人に1人)が年に1回以上転倒を経験しており、そのうち6〜7割が“自宅の中”で発生していると報告されています(※出典:厚生労働省「令和元年 国民生活基礎調査」および国立長寿医療研究センター報告等より)。
1|玄関の段差・脱ぎ履き動作
多くのご家庭では、玄関に5〜15cm程度の段差があります。
若い頃は気にも留めない高さでも、筋力やバランス機能が低下した高齢者にとっては**つまずきやすい“危険ゾーン”**に変わります。
- 靴の脱ぎ履き時に片足立ちになる
- 壁や支えがなく不安定な姿勢になる
- ふらついてドアや靴箱にぶつかる
ほんの数秒の動作に潜む危険は、見落とされがちです。
2|トイレ・浴室の床の滑りやすさ
水回りは滑りやすい場所の代表格です。特に浴室では…
- 濡れた床で足を滑らせる
- 体をひねって姿勢を崩す
- 湯気で視界が曇り、距離感を誤る
トイレも油断できません。狭くて動きにくい空間では、立ち座り動作中にバランスを崩すことがよくあります。
3|敷居やマットなどの「段差・ひっかかり」
和室と洋室の切り替えや、カーペット・ラグの端にできた「わずかな段差」。
これらがつまずきの原因になることは意外と多いです。
- 視認しにくい5mm未満の段差
- 浮き上がったマットの端
- 移動中に足先がひっかかる場所
本人が「気をつけているつもり」でも、防ぎきれないケースがあります。
4|照明・視界の暗さや影の落ち方
視力の衰えも、住環境の危険を増幅させます。
- 廊下や階段が暗く、段差が見えづらい
- 夜間トイレ時に足元の確認ができない
- 影ができる位置に物が置いてある
「見えない=転ばないと思っている場所」こそ危ないのです。
5|家具の配置と動線の複雑さ
動きやすいつもりの家具配置でも、年齢とともに以下のようなトラブルが増えます:
- 歩くルートが狭くなる
- 机の角や家具の脚にぶつかる
- 手をつく場所が遠く、転倒しやすい
動線が狭い・複雑な家は、転倒を招きやすい家です。
まとめ|“暮らし慣れた家”が落とし穴になることも
長年住み慣れた家だからこそ、「大丈夫」という思い込みが生まれやすくなります。
しかし、加齢によって体の動き方や見え方が変わっている以上、
“今の体に合った環境”を考えることが、転倒予防の大きな一歩になります。
次回予告|認知機能と転倒の意外な関係とは?
次回は、見落とされがちな「認知機能」と転倒の関係について解説します。
- 足元に気づけない
- 判断が遅れる
- 危険を認識できない
そんな“気づけないリスク”にどう対処すべきか、わかりやすくご紹介します。
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