はじめに|玄関は「転倒リスクの交差点」
高齢者にとって玄関は、
✅ 段差がある
✅ 片足立ちになる
✅ しゃがむ・ねじる動作がある
という“バランスを崩しやすい動作”が重なる場所です。
私は病院やリハビリの現場で、「玄関で転んでしまった」という方を数多く見てきました。
大きなケガにはならなくても、それをきっかけに外出が減り、自信を失ってしまう方も少なくありません。
この記事では、今日からできる玄関の転倒対策を、道具・環境・動作の視点から深掘りして紹介します。
1|置き型手すりで“とっさの支え”をつくる
手すりは、転びそうなときに「とっさにつかめる場所」があるだけで、安心感と安全性が大きく変わります。
特におすすめなのが置き型タイプの手すりです。
- 賃貸でも使える(工事不要)
- 自分の体格や動作に合わせて高さ調整できる
- 安定したベースでグラつきにくい
靴を履く時や段差の昇降時に、そっと手を添えるだけでも身体の軸が安定しやすくなるため、
「なんとなく不安…」という方にとっても、有効なサポートになります。
2|踏み台を使って“段差”をゆるやかに
日本の住宅では、玄関の上がり框(かまち)が15~20cm以上あることも多く、
高齢になるとこの高さが**足腰にとって「大きすぎる段差」**になります。
- 一気に上がることで膝や股関節に負担がかかる
- 下りる時にバランスを崩しやすい
- 靴を履いた状態ではさらに高さが合わなくなる
そんなときには、中間に「踏み台」を置くことで段差を2段階にわけるのがおすすめです。
特に、
- 幅が広めで両足がしっかり乗るもの
- 裏面に滑り止めがあるもの
- 夜間も見やすい色や素材
を選ぶと安心です。
3|靴の脱ぎ履きを“座って行う”という工夫
片足でバランスをとって靴を履いたり脱いだりするのは、実は非常に難易度の高い動作です。
- 足を上げたままバランスを保つ
- かがむことで重心が前に偏る
- スリッパや靴がずれたときに足元が不安定になる
このような動作を安定させるには、「座って履ける」仕組みづくりが効果的です。
✅ 玄関ベンチやスツールを設置する
✅ 靴べらを使ってかがまないで履けるようにする
✅ 足元にすべり止めマットを敷く
こうした工夫によって、時間をかけてゆっくり、安定して靴を扱えるようになります。
4|靴そのものの選び方も見直してみる
靴の種類によって、転倒しやすさは大きく変わります。
避けたい靴の例:
- かかとがパカパカ浮くスリッパ
- 底がすり減って滑りやすくなっている靴
- 柔らかすぎて足を支えられない靴
選ぶと安心な靴の特徴:
- 足の甲・かかとがしっかりフィットする(面ファスナーやゴム付き)
- 滑りにくいゴム底・グリップ力のある靴底
- 足入れしやすく、立ったままでも履きやすい
「靴を変えただけで外出がしやすくなった」という方も多く、
靴の見直しは“動きやすい生活”の土台づくりになります。
まとめ|毎日使う玄関こそ“安全第一”で整える
転倒は、ほんの一瞬の油断や動作の不安定さから起こります。
でも、手すり・踏み台・靴・動作の工夫といった小さな準備で、大きな安心につながります。
玄関は「家から出るための場所」であると同時に、
**「安心して生活を続けるための第一歩」**でもあります。
まずは、できることからひとつずつ整えていきましょう。
次回予告|トイレや浴室での“滑りやすさ”をどう防ぐ?
次回は、水回りに多い“滑る場所”での転倒を防ぐ対策をご紹介します。
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