親の介護は何から始める?|最初の3ステップを作業療法士が順番に解説

親が退院することになった。実家で転んだと連絡が来た。「そろそろ介護のことを考えないと」と思ったとき、何から手を付ければいいのか——この記事は、その最初の3ステップを順番に解説します。

外来リハビリの最終日に、娘さんからこんな相談を受けたことがあります。「できるだけ私がやってあげたい。でも家のこともあって、全部は無理。母には自立してほしいけど、前より動けなくなっているのは確かで……心配なんです」。リハビリの卒業はうれしい日のはずなのに、ご家族にとっては「これから誰に頼ればいいのか」が始まる日でもあるんです。

先に結論です。最初の一歩は、介護サービス探しでも施設探しでもなく「地域包括支援センターに電話すること」。ここから全部つながります。

目次

最初の電話先は「地域包括支援センター」です

名前は硬いですが、中身は「高齢者の暮らしの総合相談窓口」です。相談は無料。市町村が設置していて、親御さんの住所地ごとに担当センターが決まっています。「親御さんの市町村名+地域包括支援センター」で検索すると出てきます。

電話では、うまく説明しようとしなくて大丈夫です。次の一言で通じます。

「離れて暮らす親のことで相談したいのですが。最近転ぶことが増えて、介護保険を使ったほうがいいのか分からなくて」

病院で15年働くなかで、ご家族が疲れ切ってから相談に来るケースを何度も見ました。違いを分けるのは介護の知識ではなく、「早く窓口につながったかどうか」です。

ステップ1|要介護認定を申請する

介護保険のサービス(ヘルパー・デイサービス・手すりの工事・車椅子のレンタルなど)を使うには、まず「要介護認定」が必要です。

  • 申請先:市町村の窓口(地域包括支援センターが代行してくれることも多い)
  • 流れ:申請→調査員の訪問調査→判定→結果通知
  • 期間:結果まで1か月ほど。だから「必要になってから」では遅く、「心配になったら」が申請のタイミングです

入院中の場合は、退院前に病院の相談員(ソーシャルワーカー)に「認定の申請をしたい」と伝えてください。退院してから動き出すより、はるかにスムーズです。

申請の遅れが何を生むか、実際にあった例を1つ。外来リハビリが終わる間際になって、介護保険の相談を受けた方がいました。そこから申請、認定、デイケアの見学と契約——通い始めるまでの間に、リハビリに約1か月の空白ができてしまったんです。何もしない1か月で、体の機能は確実に落ちます。制度の段取りを本人やご家族が事前に把握するのは、正直難しい。だからこそ「心配になった時点で窓口につながる」ことが、空白を防ぐ唯一の方法です。

病棟で働いていた頃には、逆の成功例もありました。入院した時点で「この方が家に帰るには、お風呂と段差に手すりが要る」と想定できたケースです。早めに相談員を通じて認定申請と住宅改修の準備を進めていたので、その方が予定より早く退院することになっても、慌てずに家へ帰す対応ができました。早く動いて損をすることは、本当に一つもありません。

ステップ2|ケアマネジャーと在宅の体制を作る

認定が出たら、ケアマネジャー(ケアプランを作る専門職)と一緒に、在宅でできることを組み立てます。使える道具と仕組みは、思っているより多いです。

  • デイサービス(日中の活動と入浴、家族の休息にもなる)
  • 福祉用具レンタル(手すり・歩行器・車椅子・介護ベッドなど、月数百円から)
  • 住宅改修(手すりの工事などが上限20万円・自己負担1〜3割。詳しくはこちらの記事で解説しています)
  • ヘルパー(掃除・調理・入浴介助など)

要介護1くらいの段階なら、工夫しだいで外出も続けられます(【要介護1の外出サポート記事へリンク】)。

ステップ3|「在宅の限界ライン」を家族で決めておく

ここが、病院で多くのご家族を見てきた私が一番伝えたいことです。介護で疲弊するご家族には共通点がありました。「どこまで来たら在宅をやめるか」を決めていなかったのです。

限界を決めていないと、「まだ頑張れる」を積み重ねてしまいます。そして介護する側が倒れてから、慌てて施設を探すことになります。元気なうちに、たとえばこんなラインを家族で話し合っておいてください。

  • 夜中の介助(トイレ・徘徊対応)が週3回を超えたら
  • 介護する側が眠れない日が続くようになったら
  • 火の始末や薬の管理を、本人に任せられなくなったら

ラインを決めることは、親を見捨てることではありません。「ここまでは在宅で支える」と決めることで、今の介護に安心して向き合えるようになります。

施設の情報収集は「元気なうち」が鉄則です

限界ラインを決めたら、その先の準備も少しだけしておきます。といっても、施設を今決める必要はありません。やっておくのは「親の家の近くにどんな施設があって、月いくらかかるのか」を知っておくことだけです。

限界が来てから探し始めると、空きのある施設から選ぶしかなくなります。逆に、費用感と選択肢を先に知っていれば、「まだ在宅でいける」「そろそろだ」の判断も冷静にできます。資料請求は無料なので、比較材料として手元に置いておくのがおすすめです。

笑顔で暮らせる住まいがきっと見つかる【いい介護】(無料で近隣施設の資料請求ができます)

よくある質問

Q. 親が「介護なんていらない」と嫌がります

「介護」という言葉を使わないのがコツです。「無料の相談窓口があるから話だけ聞いてみない?」「今まで保険料を払ってきたんだから、使わないともったいないよ」という伝え方なら受け入れられやすくなります。本人が嫌がるうちは、家族だけで地域包括支援センターに相談することもできます。

Q. 認定結果が「非該当(自立)」でした。何もできませんか?

できることはあります。市町村の総合事業(介護予防の教室や生活支援)は非該当でも使えるものがあり、地域包括支援センターが案内してくれます。また、状態が変わったらいつでも再申請できます。

Q. 遠方に住んでいて、手続きのために帰省できません

地域包括支援センターへの相談は、離れて暮らす家族からの電話で大丈夫です(親御さんの住所地のセンターに掛けてください)。認定調査の立ち会いなど、どうしても現地が必要な場面だけ帰省に合わせて調整すれば進められます。

まとめ|順番さえ知っていれば、慌てなくて大丈夫

  1. 地域包括支援センターに電話する(今日できる一歩はこれ)
  2. 要介護認定を申請する(結果まで1か月かかるので早めに)
  3. ケアマネと在宅の体制を作り、家族で「限界ライン」を決めておく

介護は長距離走です。最初に仕組みへつながって、抱え込まない形を作ること。それが親御さんにとっても、あなたにとっても一番の備えになります。

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