親の認知症、最初に気づくのはどんな変化?|家族が見ているサインを作業療法士が解説

「最初におかしいと思ったのは、いつでしたか」——ご家族にそう尋ねると、返ってくる答えには共通点があります。多くの方が挙げるのは、物忘れそのものではありません。

目次

家族が最初に気づく3つの変化

1. 同じ話の「頻度」が上がる

いちばん多いのがこれです。ポイントは「同じ話をすること」ではありません。もともと同じ話を繰り返す方は珍しくないからです。

ご家族が違和感を口にするのは、頻度が上がったとき。「前から同じ話はしていたけれど、最近は1回の電話で3度、4度になった」——この形の訴えを、私は何度も聞いてきました。回数を数えているわけではないのに、家族は肌感覚で変化に気づきます。

2. 日にちが分からなくなる

今日が何日か、何曜日か。ここが曖昧になるのは早い段階から出やすいサインです。ただし高齢で毎日の予定が少ない方は、もともと曜日感覚が薄れがちなので、「以前と比べてどうか」で見てください。

3. 前はしていたことを、しなくなる

私がいちばん重く見ているのはこれです。庭いじり、編み物、近所への買い物、友人との電話。「できなくなった」より先に「しなくなった」が来ます。そして本人は「したくない」「面倒だから」と言うので、家族は性格の変化や気分の問題だと受け取ってしまいます。

「物忘れ」と「認知症の始まり」を、私はこう見分けています

正直に言うと、両者を厳密に線引きすることはできません。混ざり合っているからです。そのうえで、私が現場で警戒していたのは「活動性が下がっているかどうか」でした。

  • 物忘れはあるが、活動性は保たれている方:危なっかしさはありつつも、自分で生活を回せています
  • 活動性そのものが落ちてきた方:意欲が減り、自分から動き出す力が薄れていきます。ここからは、環境を整えたり外から働きかけたりする支援が必要になります

つまり、家族が本当に見るべきは「何回忘れたか」ではなく「以前より動かなくなっていないか」です。物忘れの回数より、生活の中で減った行動のほうが、ずっと確かなサインになります。

家の中にも変化は出ます

帰省したときに見てほしいのは、本人の様子だけではありません。家が語ります。

  • もともときれい好きだった人の家が、片づかなくなっている(これが一番はっきりした変化です)
  • 洗濯物が畳まれないまま積まれている
  • 冷蔵庫の中が荒れている。同じ調味料がいくつも並んでいる
  • 賞味期限がずいぶん前に切れたものが、ずっと入ったままになっている

買い物の重複は、記憶の問題だけでなく「家にあるものを把握できなくなっている」サインでもあります。冷蔵庫は、いちばん正直な観察ポイントだと思ってください。

気づいたあとが本番です|やってはいけない対応

ここからが、この記事で一番お伝えしたいことです。

火の消し忘れが一度あったことをきっかけに、ご家族が調理をやめさせたケースがありました。娘さんはとてもよく面倒を見る方で、心配してのことでした。ところが本人にお話を聞くと、本当は料理をしたかったんです。それがその方の役割であり、生活の中心でした。それでも「娘が心配して言ってくれているから」と、自分から手放していました。

一方の娘さんは、こう話していました。「母は家で何もすることがないんです。買い物にも行かなくて」。心配する気持ちが、結果として本人から役割と外出の理由を奪っていた——誰も悪くないのに、そうなっていました。

そこで娘さんに提案しました。禁止する代わりに、条件を変えてはどうかと。

  • ガスコンロをIHに変える(火を使わない)
  • コンロまわりに安全装置やセンサーをつける
  • 家族が家にいる時間帯だけ料理をする

後日、娘さんから報告がありました。お母さんはまた料理をするようになり、買い物にも一緒に行くようになって、活動量が明らかに増えたそうです。認知症状が消えたわけではありません。それでも、失われかけていた役割は戻りました。

認知機能の低下に気づいたとき、家族が最初にやりがちなのが「危ないことを禁止する」ことです。気持ちはよく分かります。でも禁止は、本人の活動性を確実に下げます。そして活動性の低下こそ、いちばん警戒すべき変化でした。

禁止する前に、「やり方を変えれば続けられないか」を一度考えてみてください。私たち作業療法士が仕事でやっているのは、まさにその工夫です。

受診と相談は「早すぎる」ことがありません

自分から受診する方は、ほとんどいません。だからこそ、周りが変化に気づいた時点で連れて行くのが現実的です。

とくに気をつけてほしいのが、高齢のご夫婦だけで暮らしている場合です。夫が認知症で、身の回りのことはぎりぎりできている。でも活動性は落ちてきていて、奥さまが心配しながら少しずつ手をかけていく——そうしているうちに、支える側が身体的にも気持ちの面でも疲れ切ってしまう。「もっと早く受診しておけばよかった」と言われた場面は、こういうケースでした。

ご夫婦だけだと、どこに相談すればいいか調べる手段が分からなかったり、「他人に迷惑をかけるようで気が引ける」と感じたりします。結果、子ども世代が来てようやく動き出す。でもその頃には、状況はかなり進んでいます。

離れて暮らすお子さんこそ、早めに窓口だけでも確保してあげてください。介護保険の申請までいかなくても構いません。地域包括支援センターに「こういう様子で心配している」と伝えておくだけで、本人にとってもご家族にとっても、気持ちがずいぶん軽くなります。ある制度は、早く使っていいんです。

相談から介護保険の申請までの流れは、親の介護は何から始める?|最初の3ステップにまとめています。

よくある質問

Q. 検査は受けたほうがいいですか?

受けてください。私は脳神経外科で認知症の検査を担当していましたが、ご本人も、見学しているご家族も、想像していたよりできない——そういう場面をたくさん見てきました。日常会話では分からないことが、検査だと数字で見えます。「大丈夫だと思っていたけれど」が、行動を起こすきっかけになります。

Q. 診断がついたら、何か変わりますか?

正直にお伝えすると、診断がついても症状そのものが治るわけではありません。変わるのは使える支援の選択肢です。介護保険の手続きを進められるようになり、デイサービスなどで刺激のある時間を作れるようになります。診断は終わりではなく、動き出すためのきっかけだと考えてください。

Q. 薬の飲み忘れが増えてきました

飲み忘れ自体は誰にでもありますが、認知機能の低下が疑われる段階なら早めに服薬カレンダーを用意するのが正解です。本人が管理しやすくなるだけでなく、周りの家族も「飲めているか」を一目で確認できます。まだしっかりしている方でも、飲み忘れが困る持病がある場合は、自分で管理できる仕組みとして早めに導入していいと思います。

Q. 「年のせい」で片づけていいものでしょうか

「年のせい」は便利な言葉ですが、そこで止まると打つ手がなくなります。確かに、年齢によって取り戻しにくい部分はあります。それでも、今の体は習慣の積み重ねでできていて、いつでも今日がいちばん若い日です。体を変えるのが難しいなら、道具や知識で補えばいい。私が現場でやってきたのは、まさにそれでした。

まとめ

  • 最初のサインは「同じ話の頻度」「日にちの曖昧さ」「前はしていたことをしなくなる」
  • 見るべきは物忘れの回数より活動性が下がっていないか
  • 気づいたら「禁止」ではなく「やり方を変える」。役割を奪わない
  • 相談窓口の確保に早すぎることはない

認知機能の低下は転倒のリスクにも直結します。その仕組みは認知機能の低下と転倒の関係で解説しました。離れて暮らしていて日々の変化が見えない方は、見守りグッズの選び方もあわせてどうぞ。

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