賃貸でも介護の手すりは付けられます|大家さんへの相談の仕方と、断られたときの手

「うちは賃貸だから、手すりなんて付けられない」

そう思って、最初から諦めているご家庭がとても多いです。ですが、賃貸でも介護保険の住宅改修は使えます。必要なのは、大家さんの承諾です。

もちろん、必ず許可が出るわけではありません。ただ「聞いてもいない」まま諦めているケースが、本当に多いのです。

この記事では、相談の前に確認すること、大家さんへの伝え方、そして断られたときの手をお伝えします。

目次

まず知っておくこと|賃貸でも制度は使えます

介護保険の住宅改修(上限20万円)は、持ち家でなければ使えない制度ではありません。

ただし、住まいが本人の所有でない場合は「住宅所有者の承諾書」という書類が必要になります。多くの自治体が専用の書式を用意していて、賃貸用の承諾書が別に用意されていることもあります。

つまり「大家さんの承諾を取る」ことが、賃貸の場合の最初の関門です。制度そのものは開かれています。

制度の全体像は手すりの設置に介護保険が使えます|上限20万円・自己負担1〜3割にまとめました。

相談する前に、3つ確認してください

① 契約書の「原状回復」の条項

賃貸借契約書を出してきて、退去時に何をどこまで戻す約束になっているかを確認してください。

ここを読まずに相談に行くと、話が進みません。逆に「原状回復は自分たちの負担でやります」と最初から言えると、話がまとまりやすくなります。

② 誰に相談するのか

管理会社が入っている場合は、まず管理会社です。大家さんに直接連絡すると、かえって話がこじれることがあります。窓口の順番は守ってください。

公営住宅・UR・社宅などは、そもそも窓口も手続きも違います。独自の相談窓口や、バリアフリー化の制度を持っていることがあるので、まずそこに聞いてください。

③ そもそも、その壁に付くのか

許可が出ても、壁に下地(柱や補強の板)がなければ手すりは付きません。石膏ボードだけの壁に付けると、体重をかけた瞬間に抜けます。

「許可は出たけれど、結局付けられなかった」となると、大家さんとのやりとりが無駄になります。相談と並行して、業者に下地を見てもらってください。

大家さんへの伝え方|この5つを伝えます

相談するとき、この5点をそろえて伝えると、判断してもらいやすくなります。

  1. 目的:介護のため、転倒を防ぐため
  2. 場所:どこに、何本
  3. 工法:どう取り付けるか(ビス何本か、穴の大きさ)
  4. 原状回復:退去時にどう戻すか、費用は誰が持つか
  5. 費用負担:こちらで負担すること(介護保険を使うことも含めて)

3番の「工法」を業者に確認してから相談に行くと、通りやすくなります。「壁に穴を開けたい」と言うのと、「直径数ミリのビスで4か所留めます。跡は補修材で埋められます」と言うのとでは、受ける印象がまったく違います。

通りやすくなる言い方

大家さんが気にしているのは、たいてい「建物の価値が下がらないか」です。そこに答える形で伝えてください。

  • 「次の入居者の方にも、そのまま使っていただけます」——手すりは撤去せず、残していく前提で話すと、こちらのほうが喜ばれることがあります
  • 「高齢の入居者に選ばれやすい部屋になります」——実際、バリアフリーの物件は借り手がつきやすくなります
  • 「もちろん、原状回復をご希望であれば、こちらの費用で戻します」——どちらでも選べる形にしておく

「残していいですか」と「戻しますか」の両方を提示するのがコツです。大家さんに選ばせる形にすると、断る理由が減ります。

口約束で終わらせない

承諾がもらえたら、必ず書面にしてください。

これは念のためではありません。介護保険の申請に、承諾書そのものが必要だからです。どのみち書類は要るので、口頭で終わらせるとあとで二度手間になります。自治体の書式をあらかじめ持って行くと、その場で書いてもらえることがあります。

承諾が出やすい工事・出にくい工事

同じ「工事」でも、大家さんから見た重さが違います。

比較的通りやすいハードルが上がる
手すりの取り付け(壁に小さなビス)扉を引き戸に交換する
段差解消のすりつけ板を置く便器を交換する
ドアノブをレバーハンドルに替える床材を張り替える

元に戻しやすいものほど、通りやすい。単純ですが、これが基準です。

ですから相談するときは、いちばん必要なものから順に、少なく頼んでください。「家じゅうをバリアフリーにしたい」と言うと、まず通りません。「トイレに手すりを1本」から始めるほうが、結果的に多くを実現できます。

断られたとき|できることはまだあります

断られても、そこで終わりではありません。壁を傷つけずにできることが、思っているよりずっとあります。

  • 置き型・据え置き型の手すり:床に置くだけ。工事は不要です
  • 突っ張り型の手すり:床と天井で突っ張って固定します
  • 置くだけの段差解消スロープ
  • 補高便座:便座の上に乗せるだけで、立ち座りが楽になります

しかもこれらの多くは、介護保険で借りられます。工事をともなわない手すりは福祉用具貸与の対象で、要支援の段階から使えます。買うより先に、レンタルを検討してください。

場所ごとに何ができるかは賃貸でもここまでできる|工事なしのバリアフリー化を場所別に、置き型と工事の選び方は置き型手すりで足りる人・工事が必要な人にまとめました。

床の状態だけは、先に確かめてください

置き型を選ぶ場合、置く場所の床が沈まないかだけは確認してください。踏んでみて、ふわふわする・きしむ・水平でないなら、置き型は使えません。手すりは体重を預けるものなので、ぐらつくと逆に危険です。

原状回復について

退去時に元へ戻す費用は、自己負担になると考えておいてください。介護保険で改修そのものに給付が出ても、後日の原状回復まで含まれるとは限りません。

この扱いは自治体によって説明が異なることがあります。気になる場合は、申請の前に市区町村の介護保険窓口かケアマネジャーに確認してください。「あとで戻すお金も出ますか」と一言聞いておけば済みます。

ただ現実には、手すりは残していって構わないと言われることも多いです。撤去費用を心配しすぎて相談をやめてしまうのは、もったいないと思います。

よくある質問

Q. 大家さんに介護のことを知られたくありません

気持ちは分かります。ただ承諾書が必要なので、工事を伴う改修は伏せたまま進められません。

知られたくない事情があるなら、置き型や突っ張り型に絞るのが現実的です。工事をしないので報告も要りませんし、できることは十分にあります。

Q. 突っ張り型は、賃貸でも本当に大丈夫ですか?

壁に穴は開けません。ただし天井の強度によっては使えません。特に和室や、天井板が薄い建物では注意が必要です。設置は必ず業者か福祉用具専門相談員にやってもらってください。自分で突っ張ると、力の入れ方が足りずに外れることがあります。

Q. 引っ越したほうが早いのでは?

それも選択肢です。ただ住み慣れた家から離れることの影響は、思っているより大きいです。特に認知機能が落ちている方は、環境が変わると混乱が強く出ることがあります。

なお、転居した場合は住宅改修の20万円の枠が改めて使えます。引っ越しを選ぶなら、この点は覚えておいてください。

まとめ

  • 賃貸でも介護保険の住宅改修は使える。必要なのは所有者の承諾書
  • 相談前に、契約書の原状回復条項・窓口・壁の下地を確認する
  • 伝えるのは目的・場所・工法・原状回復・費用負担の5点
  • 「残していいですか」と「戻しますか」の両方を提示する
  • 元に戻しやすい工事ほど通りやすい。いちばん必要なもの1つから頼む
  • 断られても、置き型・突っ張り型・レンタルでできることは多い

「賃貸だから無理」と決めているのは、たいてい相談する前です。聞いてみるところまでは、費用もかかりません。まずそこからで十分だと思います。

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