杖が地面をつく音、聞いたことはありますか。ゴムがすり減った杖は、音で分かります。「コツ、コツ」ではなく「カツカツ」「ドンドン」と、硬いものが直接地面に当たる音。病院ではこの音で、先ゴムの寿命に気づいていました。
この記事では、作業療法士が現場でやっていた「杖の高さの合わせ方」と「先ゴムの点検」を解説します。杖は買って終わりの道具ではありません。合わせて、点検して、初めて安全な道具になります。
先ゴムは「交換できる消耗品」です
現場で驚くほど多かったのが、先ゴムがツルツルにすり減った杖です。そして多くの方が、先ゴムが交換できる部品だと知りません。すり減ったゴムの杖は、溝のないタイヤと同じ。濡れた床やタイルで、支えのはずの杖が滑る側に回ります。
チェックは3つです。
- 音:「カツカツ」と硬い音がしたら、ゴムが減りきったサイン
- 溝:接地面の溝が消えていたら交換
- 片減り:ゴムが斜めにすり減っている(傾斜がついている)場合も早めに交換を
先ゴムは数百円で買えます。杖の直径に合うサイズを選んでください。
杖の高さの合わせ方|現場でやっていた手順
基本:まっすぐ立って「大転子」に合わせる
いい姿勢でまっすぐ立ち、脚の付け根の外側にある骨の出っ張り(大転子)の高さに、杖の持ち手を合わせます。このとき肘が軽く曲がるくらいになるのが目安です。
仕上げ:実際に歩いて微調整する
ここが現場のノウハウです。基本の高さで数歩歩いてもらうと、体が前かがみになったり、肩がすくんだりすることがあります。その場合は少し下げる。「立った姿勢」ではなく「歩いている姿勢」に杖を合わせるのが、教科書と現場の違いです。実際、高さ調整のできない杖から調整式に替えて高さを合わせただけで、歩きが目に見えて良くなった方がいました。
見落としがち:室内と屋外で高さは変わります
屋外では靴を履くぶん、体の位置が2〜3cm高くなります。室内用と屋外用で杖を分けるか、調整式の杖で使い分けるのが理想です。「家の中だと杖が高く感じる」のは、気のせいではありません。
半年に1回、「高さの点検」をしてください
一度合わせた高さも、ずっと正解ではありません。年齢とともに姿勢が前かがみになってくると、以前の高さでは相対的に高すぎるようになります。長年同じ杖を使っている方こそ、半年に1回を目安に高さを見直してください。そのついでに先ゴムを見る——この習慣だけで、杖まわりの事故はかなり防げます。
よくある質問
Q. 観光地で買った木の杖を愛用しています。ダメですか?
現場でもよく見かけました(仙人が持っていそうな、立派な木の杖です)。愛着は素敵なのですが、高さ調整ができず、先ゴムも付けられないものが多い。飾りとして残して、歩行の支えには調整式の杖を使う、という分け方をおすすめします。
Q. 杖は介護保険でレンタルできますか?
多点杖(先が3〜4本に分かれたもの)など一部の杖は、要支援からレンタルの対象です。一本杖(T字杖)は対象外なので購入になります。判断はケアマネジャーに確認してください。
まとめ
- 「カツカツ」と硬い音がしたら先ゴムの交換時期。数百円の消耗品です
- 高さは大転子に合わせて、歩いて微調整。屋外は靴のぶん高く
- 半年に1回、高さとゴムの点検を習慣に
杖で歩くのが不安になってきた方はシルバーカーの選び方、砂利道など不整地の歩き方は砂利道で転ばない歩き方もあわせてどうぞ。

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